田中 英樹 先生

研究領域
- 精神保健福祉援助技術及び精神科リハビリテーションの理論
- 地域福祉としての各地の実践の分析及び計画づくりの評価
- 国際比較としての地域福祉実践
主な著書
- 『精神障害リハビリテーション学』:金鋼出版
- 『市町村精神保健福祉業務のすすめ方』:萌文社
- 『精神障害者の地域生活支援 ― 統合的生活モデルとコミュニティソ-シャルワ-ク』:中央法規出版
- 『精神障害者と家族のための生活・医療・福祉制度のすべてQ&A 』:萌文社
- 『精神保健福祉法時代のコミュニティワ-ク』:相川書房
学会・社会活動
- 日本精神障害者リハビリテーション学会常任理事・学会誌編集委員長
- 日本デイケア学会編集参与
- 全国精神保健福祉相談員会相談役
- 日本社会福祉学会 編集委員・広報委員
- 精神保健ジャーナル『ゆうゆう』編集委員
- ソーシャルケアサービス従事者研究協議会事務局長
現場と共に
北海道の網走に生まれ、小学校の頃は家が貧しくて生活保護を受けていたというのもあり、そのころから福祉というものがなんであるかはわからないけども、身近に感じていました。
高校を卒業して大学を選ぶ時に、やはり福祉の道が自分には一番合っていると考え、日本社会事業大学に入学。その後川崎市に就職して、おもに精神障害者の社会復帰や、就労援助に携わっていました。それから27年間、一貫して保健所であるとか医療機関あるいは施設で精神障害者の地域での自立支援を中心に仕事を進めてきました。
その後、佐賀大学3年、長崎ウエスレヤン大学5年の教育研究に従事し、現在の早稲田大学人間科学学術院で教鞭を取っています。
この研究所は理事長である大橋先生を含めて、志を共にする研究者で一緒に作った研究所ですけども、自然に思いが一致してやろうということになり、今日に至っています。
地域から学ぶ・現場から学ぶ研究所
この研究所を設立したきっかけは、大学院で次々と修了者を大橋先生が送り出すときに、何かその同窓会ではなくて一緒に研究者として社会貢献できるような取り組みがしたいということから始まっています。任意団体で発足してから5年ほどたってNPO法人格を取得。それから本格的に現場の人たちと一緒に、地域福祉の典型的な実践を作っていこうということで、今日があります。
研究所は、地域から学ぶ・現場から学ぶという立場であるべきだと思います。地域福祉というものを研究しようとした時にも、いろいろな研究スタイルがあります。例えば本から学んで理論を作っていく方法もありますが、地域福祉という学問自体はとても若い学問で成立間もないのです。事実上80年代から成立したような学問で、それ以前は地域福祉というのは実体概念になっておらず、理論上成立していても実態上はあまり見えていない世界でした。例えば人々が知っている地域福祉の推進機関は、せいぜい社会福祉協議会くらいしかないというような時代でしたから。理論を実践に当てはめるといっても土台すら借り物みたいな世界でしたから。その後地域福祉は80~90年代から実体化してくる訳ですけれども、実践から学ぶ、現場から学ぶということをやったほうが理論化も進むというように考えられるようになってきました。よって当研究所のスタンスも当然、現場から学ぶ、地域から学ぶという姿勢になる訳です。
自身と研究所の未来
私自身の一番大きなテーマは、精神障害者の自立支援です。それを考えれば考えるほど、最後は地域福祉に結びついてゆかざるをえない。ベースがしっかりした状況で精神障害者の支援を考えないと、ある分野のある一部の精神障害者という捉え方ではやっていくわけにはいきません。
インクルーシブ(包み込む)と言いますか、そういう枠で精神障害者の支援というものを捉えて、実践の道筋をしっかりと作っていくのが、私の中心的な仕事です。それを行う上で、理論上私自身が考えているのは、「インテグレイテッドライフモデル=統合的生活モデル」というものを私なりに打ち出しています。
従来、精神医療とか精神保健の世界では、精神障害者というのは、医療の対象として見られているわけで、基本的には医療モデルから政策が出発しています。今でも圧倒的に、医療モデルの力が強くて、まず治療、そのための治療施設として病院をたくさん作り、入院させる、というシステムを戦後日本はずっと続けてきた訳です。
統合的生活モデルという概念を提唱したのは、今の医療は昔の医療とやっぱり違ってきています。これは色々な国をずっと視察して感じたことでもありますが、医療はより地域にシフトしなければならないという考えから始まっています。つまり長期入院するような医療ではなくて、少し調子が悪いときや仕事中でも気軽に受診できる医療や、土曜休日夜間の診療をするとか。それから良質なリハビリテーションといいますか、リハビリテーションをきちんと生活の中に取り入れて、地域で展開するようなリハビリテーションも重要なのです。こういったことを継続して発信し、志を共にする人々と一緒になって考え、解決していける研究所でいて欲しいと思います。
これから福祉を志す方へ
冒頭にも申し上げましたが、私は川崎で保健所とか精神障害者の専門のリハビリテーションの施設等で27年間勤務し、その後研究者になったので研究者歴はまだ若く、やっと10年になったところです。
ただ、福祉に携わる方は誰でも研究員になることができます。より本格的に地域福祉の実践や研究を深めたいと思うのであれば、さまざまな地域にもっと足を運ぶことです。私たちは良く「フィールドを持て」と言うのですが、自分がキチッと関われる地域を何箇所かもって、そこから理論というのを作っていくことができれば、自ずと道は開けるはずです。

~番外編~ 普段の先生
北海道から沖縄まで全国各地で研修とか講演で呼ばれる機会が多く、なかなかゆっくりすることができないのですが、実は料理が趣味なんです。学生を集めて料理パーティーも開くほどでしたし、特に和食系が強いんです。カレイの3枚おろしとかね。
あとは料理が好きだから当然自分の作品を並べる器にも凝りだし、陶器を集めることも趣味になりました。九州にいたので、唐津焼とか有田焼とか。うちの娘は自分で作ってしまうんですよ。ちっちゃなときから。いまは子どもたちと一緒じゃないですけども、家には自分たちが作ったものばかりです。
